5月22日に外部の方を招いて研究打ち合わせを行いました。それに合わせて23日に東大CNSと理研で進めているFrEDMについて、産総研の永瀬さんに講演していただきました。
タイトル
永久電気双極子能率探索に向けたゼーマンシフトとベクトル光シフトの同時抽出
講演内容
物質優勢宇宙創成の起源解明や素粒子の標準理論を超えた新物理探索に向けて、自然界に潜む離散的対称性 (C: 荷電共役変換、P: パリティ変換、T: 時間反転) の破れの根源を理解することが重要となる。例えば CP を破る物理量である電子の永久電気双極子能率(EDM)は、標準理論の寄与によるバックグラウンドの影響を受けにくい新物理探索の理想的プローブとして、国際的に探索が進められている。電子 EDM は、原子や分子といった量子多体系において、増幅されて原子・分子 EDM として発現し、特に原子番号最大のアルカリ原子であるフランシウム(Fr)は、相対論的効果により最外殻電子の EDM が 799 倍に増幅される。よって、 レーザー冷却技術を駆使して光格子中の Fr のエネルギーシフトを精密に測定することで、高感度電子 EDM探索が実現される。その一方で、電子 EDM 探索に用いるエネルギー準位は大きな磁場感度を持ち、さらに光格子を形成する非共鳴レーザー光は、原子に AC シュタルクシフトを発現させる。よってゼーマンシフトと AC シュタルクシフト(光シフト)は主要系統誤差要因となり、これら系統誤差を正確に測定し補正する機構は必須となる。本研究では、Fr-EDM 測定の主要な系統誤差となる磁場と円偏光強度を同時計測する新技術とし、光格子を用いた共存磁力計を実現し、新物理探索の技術基盤を構築した。光格子中に同時トラップした 87Rb と 133Cs に対して、量子非破壊測定として知られるファラデー回転を利用したスピン歳差周波の測定を行い、磁場と円偏光強度を同時抽出した。本講演では、構築した実験装置と得られた結果について述べる。